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こんにちは。土地家屋調査士として長年にわたり土地の測量・登記・境界確定業務に携わってきました。
本日は、近年とくに増えてきた“危うい考え”について、はっきりとお伝えしたいことがあります。

それは——

「測量しなくても土地は売れるし、費用をかけるのはもったいない」という考え。

確かに、一見すると測量なしでも不動産売買の契約は可能です。
しかしそれは、**「自分の責任で地雷原の上を歩くようなもの」**です。
数十万円の測量費用を惜しんだばかりに、数百万円・数千万円の損失に繋がる例は、決して珍しくありません。

この記事では、測量をしないまま土地を売るリスクと、なぜ「測量してから売るべき」なのかを、事例とともに分かりやすくご紹介します。


◆ 測量なしでも土地は売れる?→「契約自体は可能、でも…」

不動産の売買契約において、「測量済み」であることは必須ではありません。
登記簿に記載されている面積(公簿面積)を元に、「公簿売買契約」を締結することは可能です。

ですがこれはあくまで最低限の条件を満たしているだけであり、トラブル回避の観点では非常に不安定な状態です。

公簿面積には以下のような落とし穴があります:

  • 実際の面積と数㎡〜十数㎡異なることが多い(特に古い登記)
  • 境界標がないことで隣地とのトラブルに発展
  • 面積の誤差によって価格トラブル・契約解除・損害賠償請求が起こる
  • 買主からの信頼を損ない、交渉が不利に進む

つまり、「売れるから測量しない」は、目先の手間や費用を優先して、“後から取り返しのつかない問題を抱える”可能性があるのです。


◆ 測量なしで土地を売った結果、実際に起きたトラブル事例

① 面積が登記より狭くて売買契約が白紙に

ある売主は、登記簿に記載された公簿面積150㎡を根拠に土地を売却。
ところが、買主が建築前に実測を依頼した結果、実際には137㎡しかなかったことが判明。
買主は「話が違う」と契約解除を申し出、仲介業者を巻き込んだ返金トラブルに発展しました。

損害額:仲介手数料、実測費用の負担、弁護士費用、次の買主探しで6ヶ月ロス。


② 境界線のあいまいさが原因で建築確認が下りず、建築中止に

売主は測量せず土地を売却。買主はすぐに住宅建築を計画したが、境界の不明確さと隣地との越境問題が発覚。
建築確認申請が下りず、設計変更や隣地調整が必要となり、工事が1年以上延期となってしまいました。

結果、買主は「測量をしないで売った売主」に責任があるとして、損害賠償請求を提起。


③ 建物が越境していたことが判明し、買主が損害を被る

古い住宅付きの土地を売却したケース。売主は測量をせず、建物の位置関係も確認せずに売却。
その後、買主が隣地から「越境している」と指摘され、数百万円の移設費用を自腹で負担する羽目に。

売主も「知らなかった」では済まされず、契約不適合責任を問われました。


◆ 測量しない売却が“損”につながる理由

① 面積の誤差=売却価格の誤差

例えば、土地1㎡あたり25万円のエリアで、登記簿の面積が120㎡だったとします。
しかし実際は108㎡だった場合、12㎡×25万円=300万円の価格差。
買主がこの差に気づいた場合、値引き交渉や契約解除が起こる可能性は極めて高いです。


② 買主にとって不安材料になり、売却が進みにくい

不動産の購入は人生でも最大の買い物です。
「測量図がない」「境界が不明確」な土地に対して、買主は以下のような不安を抱きます:

  • 建物を建てられるのか?
  • 隣地と揉めることはないか?
  • 面積が実は足りないのでは?

こうした不安が買主の判断を鈍らせ、結果として価格交渉で不利になったり、売却までの期間が延びる要因になります。


③ 登記との不一致が「契約不適合責任」につながる

民法改正により、売主は「契約内容と違った物件」を引き渡した場合、契約不適合責任を問われることがあります。

測量をしていないがゆえに面積や境界に齟齬があり、それが後から判明した場合、損害賠償や契約解除の請求を受けるリスクがあるのです。


◆ 測量をすべきタイミングは「売る前・建てる前」

測量は、売却契約や建築計画を進める“前”に行うべき作業です。

以下のような場合には、必ず測量をおすすめします:

  • 土地が古くから登記されており、面積の確証がない
  • 境界標が確認できない
  • 隣地と境界線のトラブルを未然に防ぎたい
  • 売却する予定の土地が複数の筆にまたがっている
  • 建物を建てる際に敷地面積が明確でないと設計に支障が出る

◆ 測量はコストではなく「安心」と「信用」への投資

土地家屋調査士による測量には、確かに費用がかかります。
境界確定測量であれば、30〜60万円程度が相場です。

しかしこの費用は、「未来の損失リスク」をなくし、「買主からの信用」を得るための必要経費です。

土地売却は、金額の大きさゆえにトラブルが起きた際の影響も大きくなります。
たった1度の測量が、将来の大きな損失や後悔を防いでくれるのです。


◆ 土地家屋調査士ができること

  • 現地と登記簿の面積の誤差を是正
  • 境界標を設置してトラブルを予防
  • 測量成果図の作成と登記サポート
  • 分筆・地積更正の手続きも一括対応
  • 売買・相続・建築まで、プロ目線での法的助言

◆ まとめ:「測量しない売却」は危険でしかない

「費用がもったいないから」「不動産屋が測量しなくてもいいと言ったから」——
そのような理由で、測量をせず土地を売るのは極めて危険な判断です。

測量をしないことで起きる損失は、想像以上に大きく、そして深刻です。
最悪の場合、売買契約が破棄されたり、訴訟に発展したりと、土地の価値そのものを傷つけることにもなりかねません。

土地家屋調査士としての結論は明確です。

「土地を売るなら、まず測量を」

これが、あなたの財産を守り、買主との信頼を築くための第一歩です。


土地の売却・建築・相続前の測量について、いつでもご相談ください。
初回相談・現地確認は無料です。安心できる売却・活用のために、専門家が全力でサポートいたします。