夢のマイホームを建てる前、多くの方が「間取り」や「外観デザイン」に心を奪われがちですが、**家づくりにおいて最も根幹となるのは「土地の正確な面積把握」**です。
「もう土地は購入してるから大丈夫」
「不動産会社の資料に面積が書いてあるから安心」
──そう思っていませんか?
しかし、土地の面積について“正確な数値”を把握していないまま建築計画を進めてしまうと、重大なトラブルに発展するリスクもあるのです。
本記事では、土地家屋調査士の視点から、「なぜ面積の正確な把握が大切なのか」「どうすれば把握できるのか」「どんな場面で役立つのか」などを詳しく解説していきます。
1. 登記簿の面積=実際の面積ではない!?
まず押さえておきたいのは、「登記簿に記載されている土地面積=正確な面積ではない」可能性があるという点です。
登記簿上の面積は、過去の測量結果や図面をもとに作成されていますが、古いものでは測量精度が低かったり、現況とずれが生じているケースも少なくありません。
たとえば:
- 隣地との境界線が曖昧になっている
- 塀や擁壁などの構造物が実測と違う位置にある
- 登記と現地の形状に大きなズレがある
このような状況で建物を建てると、「思ったより狭くて希望の間取りが入らない」「隣地との越境トラブルになる」といった問題が発生しかねません。
2. 建築確認申請や設計でのトラブルを防ぐために
建築を進めるには、「建築確認申請」が必要です。これは、建築物が法律に適合しているかを確認する手続きです。その際、土地の正確な面積や形状が設計上の重要な要素となります。
面積が間違っていれば、以下のような設計トラブルが起こり得ます:
- 建ぺい率・容積率の計算が誤る
- 建築可能な建物面積が想定より狭くなる
- 境界からの離隔距離が足りず、建築許可が下りない
こうした事態を避けるためにも、設計の前段階で土地の現況をきちんと測量することが不可欠なのです。
3. 境界確定測量の重要性
ここで登場するのが、**「境界確定測量」**です。
これは、土地の境界を明確にするために、土地家屋調査士が現地調査を行い、隣地所有者との立ち会い・同意を得て、公式な測量図面を作成する作業です。
境界確定測量によって得られるメリット:
- 境界トラブルの未然防止
- 隣地との関係が明確に
- 将来の売却や相続でも安心
- 建物配置の精度が向上
特に、建物を新築する場合は、隣地との距離を守るためにも正確な境界線の把握がマストです。
4. 測量を怠った場合のリスク
土地の面積を正確に把握せずに家づくりを始めてしまった場合、次のようなリスクが待っています。
▷ トラブル例①:隣地との越境問題
工事中に隣人から「うちの敷地に入ってるのでは?」とクレームが。測量していなかったため、根拠を持って反論できず、やり直し工事に。
▷ トラブル例②:建築確認が下りない
提出した図面が実際の土地と異なっていたため、建築確認申請が却下。再提出となり、工期と費用が大幅に増加。
▷ トラブル例③:将来の売却時に問題が発生
建物が敷地ギリギリに建てられていたことが発覚。買主に敬遠され、価格交渉や売却困難に。
こうしたトラブルは、**すべて「正確な測量を行えば避けられた問題」**です。
5. 測量を依頼するタイミングとポイント
測量のおすすめタイミング:
- 土地購入後〜建築設計前
- 古い土地を相続したとき
- 隣地との境界が曖昧なとき
- 土地を分筆・合筆したいとき
建物の計画に入る前、最初の段階で測量を行うのがベストです。
測量依頼のポイント:
- 実績と信頼のある土地家屋調査士に依頼する
- 必要に応じて境界確定測量も視野に入れる
- 早めにスケジュールを立てる(測量には数週間〜数か月かかることも)
6. まとめ|家づくりは「土地の見える化」から
家を建てるという人生の一大イベントを、安心・安全に進めるためには、土地の面積を正確に把握することがすべてのスタート地点です。
建築トラブルを避け、理想のマイホームを実現するためには、登記簿の数字だけを鵜呑みにせず、現地での測量を通じて“正しい土地情報”を持つことが不可欠。
そして、その作業を担うのが、私たち土地家屋調査士です。
ぜひ、家を建てる前には一度、信頼できる土地家屋調査士に相談してみてください。
正確な土地情報が、理想の住まいへの第一歩です。