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家を建てる。
それは、人生のなかでも特別な出来事のひとつです。
家族の未来を描きながら、安心して暮らせる住まいを手に入れる。
そんな大きな夢のスタート地点には、必ず“土地”があります。

しかし、その土地が本当に“安心できる場所”なのか、
きちんと確認されたことはありますか?

実は、多くの方が見落としてしまいがちなこの「最初の一歩」。
その正確な“第一歩”を支えるのが、私たち土地家屋調査士の仕事です。


「家が建てられない」という衝撃の相談

ある日、一組のご夫婦が相談に来られました。
「念願の土地を買ったのですが、いざ家を建てようとしたら、業者さんから『隣地との境界が不明瞭で建築許可が出せない』と言われてしまって…」と、不安そうな表情で語られました。

その土地は、不動産会社を通じて購入されたばかり。
広さも立地も理想的で、これからマイホームを建てようと心を弾ませていた矢先の出来事でした。

早速、私たちは現地へ向かい、現況測量と境界調査を開始。
すると、地図と現地の境界がずれていることが判明。
近隣住民への聞き取りや、過去の地積測量図との照合など、地道な調査が始まりました。


調査という名の“対話”

土地の境界とは、ただの線ではありません。
そこには、過去の所有者たちの記憶、隣人との関係、そして地域の歴史が詰まっています。

「おじいさんの代から、この杭が境だったんだ」
「昔は畑だったけど、道路ができてから少しずれたんだよ」
そんな声を一つ一つ丁寧に拾い上げ、調査資料と照らし合わせながら、少しずつ“答え”を導いていくのです。

この過程は、単なる測量作業ではありません。
まさに“対話”です。
土地に住む人々の思いを聞き、理解し、法的にも客観的にも証明できる形に落とし込む。
それが、土地家屋調査士に求められる役割です。


境界確定と、再び動き出す夢

調査から数ヶ月後。
ようやく、関係者全員の立ち会いのもと、境界の確定が行われました。
杭を打ち直し、書類を作成し、法務局に地積更正登記を申請。

「これで、やっと安心して家を建てられます」
奥様の頬に、うっすらと涙が浮かびました。
その瞬間、私たちの仕事の重みを改めて実感したのです。

境界とは、人と人を隔てる線でありながら、
その確かさが、人と人をつなぐ“信頼”を築く線でもある。


“建てる前”こそ、未来を守るタイミング

このようなケースは、決して珍しくありません。
土地の面積を正確に把握せず、見切り発車で建築計画を立ててしまい、後々トラブルになる。
そのときには、時間もお金も、そして気力さえも大きく消耗してしまいます。

だからこそ、私たちは声を大にして伝えたいのです。

「家を建てる前に、まずは土地の正確な測量と境界確認をしましょう」
それが、未来の安心と、家族の笑顔を守る最善の方法です。


土地の“見えない価値”を伝える使命

土地の価値とは、価格や広さだけではありません。
正確に測られ、明確な境界があり、法的に整備された“安心”こそが、本当の価値です。

その価値を支えることが、土地家屋調査士の使命です。
決して派手な仕事ではありません。
けれど、私たちが支えているのは、“暮らしの土台”そのものなのです。


最後に──私たちが届けたいこと

一人でも多くの方に、この事実を知ってほしい。
そして、後悔のない家づくりをしてほしい。

「家を建てる前に、土地のことを調べてよかった」
「測量のおかげで、安心して暮らせています」
そんな言葉を聞くたびに、私たちは“この仕事をしていて良かった”と心から思えるのです。

これからも、目には見えないけれど、確かに存在する“信頼の線”を引くために。
私たちは、静かに、そして力強く歩み続けます。