なぜ義務化?(背景をサクッと)
登記を放置すると、登記簿から所有者が追えない「所有者不明土地」が増え、売買や公共事業、地域管理に大きな支障が出る——この社会課題の解消が目的です。法務省
誰が、いつまでに、何をすればいい?
義務の主体
相続で不動産を取得した相続人(遺言や遺産分割で取得した人を含む)。法務省
期限
- 原則:不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内。
- 遺産分割で取得:遺産分割成立日から3年以内の登記も必要。
- 過去(施行前)に相続を知っていた分:2027年3月31日まで(または「知った日から3年」の遅い方)。
罰則(過料)
正当な理由がないのに期限を超えると、10万円以下の過料の可能性。法務省
3年に間に合わない?——「相続人申告登記」で“みなし履行”
相続人申告登記は、3年以内に相続登記ができない事情があるときに、まず相続人である旨を単独で申し出る制度。この申出を期限内にしておけば、義務を果たしたとみなされ、過料の対象から外れます。(最終的な相続登記は後で必要)法務省+1
ポイント
- 申出は相続人の一人でも可能。
- 膨大な戸籍集めや全員の同意がまだでもOK(まずは“権利主張の痕跡”を残す)。
- 申出後、遺産分割が整い次第、正式な相続登記へ。
「正当な理由」があれば過料にならないケース
法務省の案内では、以下の事情が一般に正当な理由として認められます(個別判断)。
- 相続人が極めて多数で、資料収集や把握に多くの時間を要する
- 遺言の有効性や遺産範囲に争いがあり帰属主体が未確定
- 申請義務者が重病等の事情
- DV被害等で安全確保が最優先の状態
- 経済的困窮で登記費用を負担できない
※ それでも期限が気になる場合は、相続人申告登記でまず保全するのが安全策。
よくある勘違いベスト3
- 「施行前のものは関係ない」 → 関係あります。 未登記の“過去分”も対象で、原則2027年3月31日まで。法務省
- 「名義変更は自動で変わる」 → 変わりません。 相続登記の申請が必要。法務省
- 「法務局からすぐ罰金が来る」 → 即過料ではない。催告や事情聴取が入るのが通常。とはいえ、放置はリスクです。あいはた司法書士事務所 – 人や企業の身近な法律手続きのお手伝いをしています。
住所・氏名を変えたら?——“別の義務化”にも注意
相続とは別に、所有者の住所・氏名変更登記も義務化。変更から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の可能性があります。引っ越しや改姓をしたら**“名義+住所”をセットで最新化**しましょう。法務省+1
実務フロー:迷わず進める7ステップ
- 現状整理:相続関係(相関図)/対象不動産の洗い出し(固定資産税通知・登記事項証明書)
- 期限確認:起算点(「知った日」)と3年のカウント、過去分は2027年3月末の目安も併記。法務省
- “まず守る”判断:3年内が厳しければ相続人申告登記を先行。法務省
- 測量・境界の検討:分筆や地積更正が必要なら調査・確定測量を段取り(将来の売却・担保で効きます)。
- 必要書類の収集:被相続人・相続人の戸籍、遺言・遺産分割書、評価証明など。
- 相続登記申請:遺言・法定相続・遺産分割の別に応じて最適ルートで。
- 住所変更も同時に:所有者本人の住所・氏名に変更があれば2年以内の申請を忘れずに。法務省
費用面のヒント(軽減策)
登録免許税の免税:一定の土地の相続登記で免税措置(期間:2027年3月31日まで)。小価額(100万円以下)の土地や、相続登記未了のまま次世代に相続が発生したケースなどが対象です。詳細は最新の公式情報を確認してください。法務省
ケース別の動き方(簡易フローチャート)
A:相続人が多く、話し合いが長期化
→ 相続人申告登記で期限を守る → 話し合い成立後に本登記。法務省
B:分筆や用途変更も視野
→ 先に現況調査・確定測量→ 必要なら分筆/地積更正→ 相続登記。
C:住所が昔のまま
→ 相続登記+住所変更登記をワンセットで。2年以内ルールに注意。法務省
FAQ(よくある質問)
Q1. 「知った日」っていつ?
A. 典型的には被相続人の死亡を知った日と考えますが、個別事情で前後します。迷ったら**早めに申出(相続人申告登記)**を。法務省
Q2. 3年を過ぎそう。過料は確定?
A. 即過料ではありません。 事情の確認や催告が入るのが通常です。ただし正当な理由がない放置はリスク。申出と同時並行で本登記準備を。あいはた司法書士事務所 – 人や企業の身近な法律手続きのお手伝いをしています。
Q3. 施行前の相続にも本当に適用?
A. はい。未登記なら2027年3月31日までを一つの目安に。法務省
Q4. 住所・氏名変更はいつまで?
A. 変更から2年以内。未了だと5万円以下の過料の可能性。法務省
今日からやることリスト
- □ 対象不動産と期限(3年/2027年3月末)の確認(起算点メモ)法務省
- □ 相続人申告登記の要否判断(話し合いが長引く・戸籍集めが難しい等)法務省
- □ 測量・境界の必要性チェック(分筆・地積更正が絡むか)
- □ 住所・氏名変更登記が必要なら同時手配(2年以内ルール)法務省
- □ 免税措置の対象可否の確認(該当すればコスト軽減)法務省
松和土地調査株式会社からひとこと
相続登記の期限管理と段取り設計が肝です。
- 相続人申告登記の先行/確定測量・分筆・地積更正の要否整理
- 司法書士・行政書士との実務連携で、登記~住所変更まで一気通貫
図面や書類が揃っていなくても大丈夫。まずは期限と状況を一緒に整理しましょう。