戸籍・評価証明・測量の正しい順番
相続が始まったときに「まず何を集めればいいのか」と迷う方が多いですが、基本の流れは次の通りです。
最初に戸籍を集めて相続人を確定します。次に評価証明書で不動産を漏れなく確認し、必要に応じて測量を行います。そして最後に相続登記を行うというのが理想的な手順です。
戸籍が先に必要な理由は、相続人が確定していない状態で測量を行うと、立ち会い相手や共有者が決まらず、やり直しになることがあるためです。
評価証明は、固定資産税の情報をもとに不動産の全体像を把握するために必要です。
測量は、相続財産の分け方が見えてきた段階で行うのが効率的です。売却や分筆を前提にする場合は、目的に合わせた精度で測量を進めることが大切です。
必要書類の準備
相続手続きを進めるには、以下の書類をそろえておくとスムーズです。
被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍
相続人全員の戸籍と住民票
固定資産税の名寄帳と評価証明
不動産の登記事項証明書(地番や家屋番号を確認)
遺言書の有無(検認手続きが必要な場合も)
遺産分割の方針メモ(売却・活用の方向性)
境界や測量に関する過去の図面や地積測量図
よくあるつまずきと回避方法
戸籍の一部が不足している場合は、本籍地を追って過去の役所に請求します。
登記簿は「地番」で管理されており、住居表示とは違うので注意が必要です。
測量の際に屋根や塀などの越境が見つかることがあります。その場合は、立会いで合意を取り、工事を行う前に境界を確定しておくと安心です。
また、分筆登記は測量→分筆→相続登記の順で行うのが基本です。この順番を間違えると、再度登記手続きが必要になることがあります。

売買前に境界確定が必要な理由
土地を売る前に境界を確定することは、実務上ほぼ必須です。理由は、価格・融資・リスクに直結するからです。
金融機関は担保として土地を評価する際、面積や境界が不明確だと担保価値を低く見積もる傾向があります。越境や私道の扱いが不明確な土地は、融資が通らない場合もあります。
また、買主にとって境界があいまいな土地は「見えない欠点」となり、購入をためらう原因になります。
不動産仲介業者も、境界不明の土地では説明責任を果たしにくく、価格交渉の材料にされることが多いです。
境界が確定している土地は、売却スピードが速く、値下げ交渉を防ぎやすくなります。さらに、契約後の「越境が判明した」というトラブルを防げるのも大きな利点です。
境界確定の進め方
境界確定の手順は、まず資料の調査から始まります。
法務局で公図や地積測量図を取得し、道路台帳などの情報を確認します。
次に現地測量を行い、既存の境界杭を確認します。必要に応じてGNSS(衛星測位)やトータルステーションを使って座標を記録します。
その後、道路や水路の管理者と協議し、隣地所有者と立ち会いを行って合意を取ります。
最終的に、境界確認書や写真付きの台帳を作成し、確定した図面を売却資料や重要事項説明書に反映させます。
建て替え時に注意するセットバック
建て替えの際に注意が必要なのが、道路後退(セットバック)です。
幅が4メートル未満の道路に接している場合、建物を建て替える際には道路の中心から2メートル後退する必要があります。
中心線を誤って認識してしまうと、建築面積が想定よりも狭くなったり、建築確認が取れなかったりすることがあります。
また、角地の場合は二方向の後退が必要なケースもあり、門柱やフェンス、メーターボックスなどが後退部分に入ると移設が求められることがあります。
建て替えの計画を立てる際には、道路管理者との協議で道路境界を確定し、後退部分を除いた有効敷地面積を確認しておきましょう。

分筆が向くケースと向かないケース
土地を分ける「分筆」は便利ですが、慎重な判断が必要です。
相続で等分に分けたい場合や、開発・分譲などの目的がある場合には向いています。
また、自宅と事業用地を分けたいときや、越境を解消したいときにも有効です。
一方で、分筆によって片方が道路に接しなくなる「接道不良地」になる場合や、土地が狭くなりすぎる場合は注意が必要です。
土地を細かく分けすぎると、建築の自由度が下がったり、固定資産税などの税負担が増えたりすることもあります。
分筆を検討するときは、接道状況、土地の形、上下水道の引き込み、周辺の取引事例、税金の試算などを総合的に確認して判断しましょう。
分筆の進め方と注意点
まず現地と資料を確認し、公図や測量図、道路台帳をそろえます。
そのうえで複数の区割り案を作成し、官民の協議や隣地との調整を行います。
税金や費用の試算をしたうえで、最終的な区割りを決定し、分筆登記を行います。
この際、越境がある場合は登記前に是正しておくことが重要です。
土地を分けすぎて売れにくくなる、税負担が増えるなどの失敗も少なくありません。
事前に税理士や不動産会社とも相談し、将来的な価値を考えた分け方を検討することが大切です。
松和土地調査株式会社では、相続手続きや測量、境界確定、分筆登記などを一括でサポートしています。
専門家がスケジュールと必要書類を整理し、最短ルートで手続きを進められるようお手伝いします。
相続・売却・建て替えなど、土地の取り扱いで迷ったときは、まずはお気軽にご相談ください。