1 境界標とは何か。なくなると何が困るのか
境界標は、土地の境界を地上で示すための印です。
コンクリート杭、金属標、鋲、樹脂プレート、石杭などいろいろな種類があります。これが欠けたり移動したりすると、次のような問題が起こります。
工事が進まない。塀やフェンスの位置が決まらず、施工が止まることがあります。
評価や融資が保留になる。境界が確定していないと判断され、価格や融資条件が不利になる場合があります。
近隣との関係が悪くなる。曖昧なまま使っていると、越境の主張などで意見がぶつかることがあります。
境界標の有無はトラブルを防ぐための大切な線引きです。早めに確認し、記録を残しておくことで、将来の安心につながります。
2 境界を復元するための技術
境界標の復元は、資料上の情報と現地の状況を結びつける作業です。
まず、GNSSやトータルステーションと呼ばれる機器で、周辺にある既知の基準点を測り、ズレの少ない座標を作ります。
次に、地積測量図や分筆図に記された距離や角度をもとに、当時の境界位置を再現します。必要に応じてドローンで上空から形を確認することもあります。
複数の候補が出た場合は、隣地の図面や過去の工作物、築年などを照らし合わせ、最も合理的な位置を特定します。
いきなり本杭を打つのではなく、まず仮の杭を設置し、近隣の方に立ち会ってもらい、合意を得たうえで本杭を設置します。
復元で大切なのは、誰が見ても納得できる根拠を残すことです。

3 資料の読み方と揃えるもの
「資料は法務局で取れば十分」と思われるかもしれませんが、資料には優先順位があります。最低でも以下の三つを確認します。
地積測量図: 最も重要な資料で、境界点の位置や距離、座標が記されています。
公図: 土地の配置を大まかに示した図で、正確な面積や境界を保証するものではありません。
登記事項証明書: 面積や地目などの情報が記載されていますが、現況と一致しない場合もあります。
加えて、市役所で道路や水路、都市計画の情報などを確認します。過去の覚書や境界確認書があれば、貴重な証拠となります。
4 境界標を復元し、合意を取るまでの流れ
松和土地調査株式会社では、無駄を省きつつトラブルを防ぐため、次の手順で対応しています。
まず、無料のヒアリングで困りごとや期限、費用感を確認し、資料の有無を整理します。
次に、法務局や役所で資料を集め、現地で境界標の有無や越境の有無を確認します。
その後、GNSSで測量を行い、仮の復元案を作成します。
近隣の方には封書や掲示、訪問などで丁寧に立会いの案内をします。
現地で仮の杭を示し、説明しながら確認してもらい、意見が分かれる点は保留として記録します。
合意後、コンクリートや金属の本杭を設置し、写真や座標を記録します。
最後に、境界確認書や現況図、越境物の覚書案などをまとめて書面化します。
ここまでで、誰が見ても同じ結論にたどり着ける状態を整えます。
5 近隣との合意をスムーズに進めるコツ
合意はお願いではなく、お互いの利益を共有することです。
目的を簡潔に伝えます。「将来の売買や建て替えでお互いが困らないように、境界を確認したい」という一言が効果的です。
日程は具体的に伝えます。「〇月〇日午前10時から40分程度、○○側から確認します。」のように説明します。
納得できない場合は保留でも構わないことを伝え、安心してもらいます。
高齢の方や多忙な方には、大きめの文字で案内を作り、土日や夕方の時間帯も候補に入れます。
記録は丁寧に残し、合意点には日付とイニシャルを入れ、写真も残します。

6 よくある失敗と注意点
仮の杭のまま工事を始めないこと。工事後にやり直すと余計な費用がかかります。
古い公図だけで判断しないこと。地積測量図、現況、公図の順で確認します。
越境がある場合、すぐに撤去を求めないこと。期限や費用を決めて覚書を作るほうが関係が円満に保てます。
隣地の一部の人が不在のまま確定させないこと。後で覆る可能性があります。
写真や座標の記録は必ず残すこと。後からの確認に役立ちます。
7 越境が見つかったときの覚書の書き方
越境しているものの内容や位置、是正の時期、費用の負担、承継の有無、連絡先を明記します。
覚書は、将来のトラブルを防ぐための保険のようなものです。境界の合意とあわせて整えておきましょう。
8 よくある質問
杭が一本だけない場合、その一本を復元すればいいですか。
その一本が全体の形を決める重要な点であることもあります。周囲の複数点を確認して整合性を取る必要があります。
隣地の人が合意してくれない場合はどうすればいいですか。
日程を変えて再提案したり、代理人や書面で意見をもらったりする方法があります。最終的には筆界特定という行政手続も利用できます。
将来また杭が失われないようにするにはどうすればいいですか。
耐久性のある材料で設置し、座標や写真、図面を保管します。工事前には仮囲いなどで保護するのがおすすめです。
境界標は安心の目印です。欠けたままにせず、早めに復元しておくことで、将来のトラブルを防ぐことができます。技術による正確な測量と、近隣との丁寧な合意形成が解決の近道です。写真や座標、署名入りの記録を残すことで、再現性のある確実な結果につながります。
未来のトラブルを防ぐために、まずは現地確認からお気軽にご相談ください。